【物流リーダー必勝のマインドセット:eBook第3集】

< 目 次:eBook第3集 >

表紙・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
ネーミング・・・・・・・・・・・・・・ 3
IT革命で何が起こるのか? ・・・・・・・4
世界同時〇〇⁈・・・・・・・・・・・・ 5
ロジの神様・・・・・・・・・・・・・・ 6
アマがプロを超える・・・・・・・・・・ 7
ロジの神様パート2・・・・・・・・・・ 8
相手を思い通りにする戦術・・・・・・・ 9
ラブ注入?!・・・・・・・・・・・・・10
真由美ちゃんはどこだ・・・・・・・・・11
固有名詞で行こう・・・・・・・・・・・12
伊達直人について思うこと・・・・・・・13
JITって、けっこういい加減?・・・・14
ガチョウと黄金の卵・・・・・・・・・・15
ペギー・・・・・・・・・・・・・・・・16
ワグネリアンって?・・・・・・・・・・17
(仮想)永久機関・・・・・・・・・・・18
老和僑となれ・・・・・・・・・・・・・19
一石三鳥・・・・・・・・・・・・・・・20
時間の管理・・・・・・・・・・・・・・21
時間の管理パート2・・・・・・・・・・22
野球脳・・・・・・・・・・・・・・・・23
タイツ先生・・・・・・・・・・・・・・24
3Sが大事・・・・・・・・・・・・・・25
未来を作る人の戦略・・・・・・・・・・26
わが町、古河・・・・・・・・・・・・・27
桃むすめ・・・・・・・・・・・・・・・28
とにかく6人に電話をかける・・・・・・29
石橋をたたいて渡る・・・・・・・・・・30
波動の正体・・・・・・・・・・・・・・31
細胞の死・・・・・・・・・・・・・・・32
雪の華・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
落ちてきた免疫力・・・・・・・・・・・ 34
神武東征・・・・・・・・・・・・・・・ 35
サラリーマン染色体・・・・・・・・・・ 36
衝突実験・・・・・・・・・・・・・・・ 37
インフレーション・・・・・・・・・・・ 38
目線の違い・・・・・・・・・・・・・・ 39
地動説ふたたび・・・・・・・・・・・・ 40
輝ける『iPadバカ』・・・・・・・・ 41
炎上するリビア・・・・・・・・・・・・ 42
投票のパラドックス・・・・・・・・・・ 43
日々ストレッチ・・・・・・・・・・・・ 44
遺伝は何を伝えていくのか・・・・・・・ 45
時間の習俗・・・・・・・・・・・・・・ 46
ギャンブル気質・・・・・・・・・・・・ 47
インド化計画・・・・・・・・・・・・・ 48
ローゼン閣下・・・・・・・・・・・・・ 49
オヤジ頑張る・・・・・・・・・・・・・ 50
夫婦善哉・・・・・・・・・・・・・・・ 51
アンビバレンツ・・・・・・・・・・・・ 52
P波・S波覚えてますか・・・・・・・・・53
第2の矢・・・・・・・・・・・・・・・ 54
代替エネルギー・・・・・・・・・・・・ 55
天の意志・・・・・・・・・・・・・・・ 56
神の光・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
経産大臣の発表を評す・・・・・・・・・ 58
補給戦・・・・・・・・・・・・・・・・ 59
青き衣の者(1)・・・・・・・・・・・ 60
青き衣の者(2)・・・・・・・・・・・ 61
聖武天皇の祈り・・・・・・・・・・・・ 62
お問い合わせ先・・・・・・・・・・・・ 63

1


表紙

2

ネーミング

今日、久しぶりに東京モノレールを利用したのでちょっとツッコまして頂く。

それは、昨年10月稼働開始した、羽田の東京国際空港国際線地区貨物ターミナルTIACT。
第一号の輸入通関貨物は、確か郵船ロジさんがバンコクからの冷凍エビ?でしたというニュースだったが、そのことではない。

ケチをつけたいのは、TIACTというネーミング。
これじゃあ、羽田とTIACTが一致しない。
まあ、ネーミングってそういうものなのかも知れないが。。。
過去にも、原木をTACTと言っていたけれど。。。

ちなみに、成田の方は、NARITA AIRCARGO TERMINAL という。
うーん、こっちの方が、わかりやすい。人にやさしい。
それが大事なのでは。。

3

IT革命で何が起こるのか?

私の持論は、「ITは物流のためにある」である。
産業革命が社会に与えたインパクトは、工場というものが生まれ、人々が家から離れ工場に働きに出たという点にあるという。

ところが、これだけインパクトを与えた産業革命でさえ、最初の50年間にしたことといえば、産業革命以前からあった製品製造の機械化だけであった。

ほんものの革命といえるのは実に、1829年に鉄道が現れて、それがまたたく間にブームとなって以降のことだ。しかしそれでもしばらくは、鉄道は人の乗り物でしかなかった。アメリカで、物を運ぶ貨物用に切り替えた人が現れたのは、さらに30年もの年月が必要だった。

「いまから考えると、1785年ワットが円運動による蒸気機関を発明したとき、世の人々はそのように使うということを何故すぐに気づかなかったかが、不思議でならない」と、ドラッカーは考え深げに語っている。

だからあえて言いたいのだ。

「ITがほんものの革命であるなら、それは、物流の何かを突然変異的に変えるはずである」と。

4

世界同時〇〇⁈

シンクロニシティ~物流の世界にも示し合わせた訳ではないのに、同じことをやっているということがある。

平原直先生の著作「人間の知恵」に、奈良県明日香村にある蘇我馬子の墓とされる巨石古墳のことが語られている。
昭和8年、最初に調査が入ったとき、村人たちはそこは古狐が女に化けて踊りを踊った場所と信じており、まさか人の手によって築かれたものとは思ってもいなかったそうだ。
というのも、およそ30からなるこの巨石群のうち、最も大きい二つの天井石は、ひとつが77トン、もうひとつが63トンあり、とても人が運び人が積んだという事は考えられなかったからだ。

ところが、京都大学のチームによって昭和58年奈良市の山中で、60トンあまりの大石を使って、再現実験が行われた。
それには、藤づるのロープ、滑車、ロクロ、梃子、コロ、修羅(台)が使われた。
そして、77トンの巨石を3km運ぶのに、総勢256人で、195日を要すると計算された。
つまり、古狐ではなく人間が行なった仕事だったと証明されたのだ。

こうした、人間業とは思えぬ巨大遺跡・巨大建造物は、ピラミッドを筆頭に世界各地に存在している。
平原先生は「悲しいことだが、虫けらも人も、石炭のひとかけら、米のひとつぶ、物と名のつくものは何ひとつとして造り出せない、ただ物を動かすことで生きている」と説く。

そこで私は思うのだ。
特段に人は、意志をもって巨大な物を動かす。さらに、智慧あるものは、信じられないほど大きい物を動かしたくなるのだ。
それが人間の証明であり、世界各地にある人間の偉大さの記念碑なのだ。

5

ロジの神様

ロジスティクスは兵站術と訳されるが、山口大学の谷光太郎先生によると、もともと宿営地を確保することであったという。
また、その役目を担うのが参謀であり、クォーターマスターをその語源とするとのこと。

昔、その日の行軍を終えた、何万人という兵士、何百頭という馬に、食事と睡眠を提供するのが参謀の第一の仕事であった。

次に、明日以降の戦闘に必要な武器弾薬、食糧の移動と補完。それから、安全な補給路の確保という具合で、年末にNHKでやっていたドラマ「坂の上の雲」~秋山真之のように作戦を立てるまでになったのは、
ずっと後世のことだ。

その意味で歴史上、最も優れた参謀は、
三国志のヒーロー諸葛孔明ではなかろうか。
蜀から魏まで数百Kmの峻険な山道を、5たび往復させた手腕は、孔明のみがやれた孤高の仕事だ。
私たちは赤壁の戦いとか派手なものに目を奪われてしまうが、歴史の現場ではロジスティクスという戦いもあったことを忘れてはならない。

6

アマがプロを超える

塩野七生氏の「日本人へ」で、カエサルがわずか5万人足らずの軍隊で、33万8千人を相手に戦った古事を引いて、アマチュアがその道のプロを超えるにはどうしたら良いかを述べている。
それは、「プロならば決して考えもしなかったことをやることだ」と説く。
なあんだ、そんなことか、と思う勿れ。
軍隊も人数が多くなると、統括する管理の手法が編み出され、徹底される。
必ず戦闘の方式バトルメソッドがあるものだ。
ところが、カエサルは一貫してアマチュアであり続けた。
四方八方を何万という敵に取り囲まれても、冷静に敵陣を観察・分析し、敵将がどういったバトルメソッドやマネジメントを用いているかを見抜く。
そして、その盲点を突くべく、絶妙のタイミングで攻める。
プルタークの『列伝』で、アレクサンダー大王と並び称されるカエサルだが、ウェストポイント陸軍士官学校の教材になったことはない。戦術が見えないからだ。

そういえば、アップルのスティーブ・ジョブスは、創業まもなく、自らのフォルクスワーゲン(中古)を処分するまでに困窮していた時でさえ、周りの者たちにこう言っていたらしい。

「ビジネスモデルをつくるな、人を見つけろ」

このふたりに共通なのは、おそらく仕事を楽しんでいる点ではなかろうか。

7

ロジの神様パート2

諸葛孔明を出したところで、日本にロジ神様は居ないのかという話になるが、すぐに思い出すのは徳川家康である。
「人生は重き荷を負いて遠き道をゆくがごとし」
さすが、この人くらいになると、生き方そのものがロジである。
まず、並みいる武将の中ではケチで臆病だと不人気だが、ケチと臆病は二大ロジ気質である。文句があるか。
疑惑から正室・築山殿と嫡男・松平信康を殺害したり、服部半蔵らスパイを用いたり、妾妻のお万の方様相手に国家経営を説いて身内に同調する者がどれほどいるのか探ったり、何でもかんでもウラがある。

参勤交代もロジで外様大名を疲弊させる作戦である。
幕藩体制も、江戸が攻められないようにするロジである。
米の石高で諸国の生産量・流通量、それから藩主の器量まで、あらゆるものを計った。なんという唯物論者だろうか。好みの尺度を国全体に押し付けるとは、物流マンの夢のまた夢だ。
まあ、彼以上のロジ神様はもう出ないだろうなあ。

8

相手を思い通りにする戦術

日本が外交で試練にあっている。
中国相手にさっぱりである。
歴史作家の加来耕三氏によると、中国には鬼谷子(きこくし)なる人を開祖とする、ディベート専門家養成ギプス?「縦横学」なるものがあり、3000年の歴史があるという。
この学派のスターは、蘇秦とか張儀とか論客揃い。
単身敵国にのりこんで、舌先三寸で白刃のもとをかい潜り、斉など6か国を纏め宰相をつとめたり、大金をせしめたと、中国史に残るその足跡は数限りない。

しかし彼らは特別なことをやった訳ではない。
その第一条は、「相手の信頼を勝ち取れ」だ。
それには、「相手の立場で考えよ」。
あるいは「相手を持ち上げろ」。
そして「相手の搦手(弱いところ)ら攻めよ」。
おおっ、これってビジネス格言のオンパレード(古っ)でないか?
こちら側にしてみると、モチ上げられたり、コケ下ろされたり、やられっ放しだが、いつしかまんまとその権謀術数にはまってしまう。AかBか迷っていたのに、いつしかCしかないと思い込むのだ。

そういえば尖閣事件の頃、よくテレビに出てた中国のあの女性報道官。
今はムカつかせる発言ばかりだが、あのスーツの下に養成ギプスをつけていたりして。。。
こんどニコニコ笑顔で登場して来られたら、どうする?

9

ラブ注入?!

ポストポーメントとは、リードタイムの短縮とコストダウンの両方を叶えるための理論。

SCMの最終形アンカーともいわれる。

簡単に言えば、本来、工場で行われる注文に合わせた製品の多様化・カスタマイズを、倉庫・物流センター側で出荷直前の工程でやってしまおうという取り組みのこと。

そういう意味では、デマンドチェーンとも言えるが、それはただの物流システムではない。

もちろん、製造でいうVEとも言えない。

映画『トイ・ストーリー』や『ファインティング・ニモ』の作者ジョン・ラセターは、アニメ製作でリアルをとことん追求した。

そこではアニメに登場するおもちゃの人形や、虫や、魚が、人間のように笑ったり泣いたり、他人のために苦しんだり悲しんだりする。

観客は小さなクマノミのニモに、自分を投影する。

それが、ほんものの「リアル」なのだ

ポストポーメントは、作り手と消費者が織りなす、リアルなのだ。

神は細部に存在する。
ラブ注入だ。

10

真由美ちゃんはどこだ

販促の大家、高田靖久氏の著作に、新規客を集めるノウハウが紹介されている。
ある町を訪れた氏は、あるファーストフード店の店頭で、小さな黒板を目にする。
そこには、

『きのう、お父さんのボーナスの使い道について、家族会議をしました。私は車が古くなったので買い替えたらと提案しました。でも、お母さんが「真由美が高校最後の夏休みだから、みんなで北海道に行きましょう」と言い、そうすることにしました。(バイトの真由美)』

と、書いてあったそうです。
ふつう、今日のオススメセットとか、こだわりの食材とかが書いてあるものなのに~と思わずその店に入ってしまった高田氏は、店内を見渡して、
真由美ちゃんはどこだろう?

と捜している自分を発見する。

これが、氏が提案する販促必殺ワザ「アナログブログ」との出会いだったそうだ。

人は他の人の持つ、感情に弱く、喜びに同調する。

11

固有名詞で行こう

戦略デザイン研究所の水口健次先生は、戦略を立てる上で捨てるべき2つのことを掲げている。

ひとつは、全体と平均を捨てること。
もうひとつは、普通名詞を捨てること。

「今の若いモンは・・・」とか、「とにかく女というやつは・・・」とか、「じゃ、ビールをお願いします」とか。
だれだって考えるような、どこに居たって聞かされるような、当たり障りのない受け答えや、言葉や、説明や、宣伝文句では、ダメなんだ!
何ひとつ売れない。
競争には勝てない。
だから、普通名詞で考えても、言葉にしても戦略にはならない。

主婦はもう単に主婦という普通名詞で表現しきれない。
学生に平均的な学生はいない。
スーパーはスーパーではない。いろいろな特色を持っている。
平均的な人間が、スーパーで買い物している訳ではない。
データばかり拾っていると、ついそれに囚われてしまう。
平均を出してしまう。
水口先生はその脆弱さを説いているのだ。

十人十色なのだから、その違いを見極め、自分のターゲットを見定め、具体的にいつ、どこで、どういう売り方をしたら、買っていただけるか。
その答えを持っているかどうか。
それが出来なければ、死にゆくだけだ。

確かに、そうだな。
私もなんちゃってコンサルと称しているが、
私を買ってくれている人は、
私を物流マーケティングの専門家だと見ていてくれている訳だから。
このブログも、読者を増やす積もりなら、もっとテーマを絞るべきだろう。
とはいえ、今しばらく遊ばせてくれ。

12

伊達直人について思うこと

伊達直人が日本国中に現れている。

私はその行為に口をはさむ者ではないが、私が伊達直人という名前で思い出すのは、彼と死闘を繰りひろげた虎の穴出身のレスラーたちのことだ。

彼らはみな、伊達直人と同様、集められた孤児たちであり、地獄の特訓から友の屍を越えて這い上がってきた者たちだ。

さらに、ゴールデンマスクとか赤き死の仮面とか、その末路も憐れである。
負けてリングを去った彼らは、ふつうの人間として生きることすらままならぬ。
それほどの哀しみとは、いったいどれほどのものなのか。
そんなことを考えていた自分が、実は、私の原体験にもなっている。

だから、ケンシロウよりラオウに心惹かれる。綾波レイをはじめとするリリスの子たちにも感情移入する。
そういえば、エヴァの使徒たちも、無為な闘いを強いられていたなあ。。

もののけ姫のアシタカが村を出て荒野を行くシーンでは映画館で大泣きし、そこは泣くとこじゃないだろと連れに突っ込まれた。

サイボーグ009のライバル・ナックは、恋人ミッチーが死んでもう自分は生きていけないと思いコバルト爆弾を抱いて自爆。
ジャンヌダルクの田舎娘のもつ一途さが、オルレアンの囲みを解くという栄光と火あぶりの刑という死をもたらした。
ネロの眠るような死もだ。

彼らに救いはない。
ただ、私らが多少老いてもまだ持っている、その少年のような心の中に生きるのみだ。

13

JITって、けっこういい加減?

トヨタ生産方式生みの親、大野耐一氏が自ら語ったところによると、JITジャストインタイムというのはトヨタ造成語。しかも、初代社長豊田喜一郎がつくった言葉とのことだ。

あるとき誰かに、英語ではジャストインタイムという言葉はなく、エクザトリー・オンタイムというのが正しいと指摘されたそうだ。
氏はそれを素直に認めた上で、ジャストインタイムのジャストは、ジャスト・モーメントのジャスト、「ちょっと待ってくれ」の意味だと説明した。

たとえば、午前11時に納めてくれジャストインタイムとお願いしたやつは、11時ぴったりに持って来いといっているのではない。11時の時点では、ラインサイドにはまだ1時間分くらいの部品が残っている。

だからジャストインタイムの本当の意味は「とにかく間に合えばそれで良いよ」で、むしろ「早すぎるとラインサイドにものがあふれて困るんだ」というのが真意というか本音なのだ。

エクザクトリーオンタイムで持って来られても、あまり意味がないですよという訳だ。

私が思うに、氏のつくり上げたトヨタ生産方式の中には、自働化にしても、ジャストインタイムにしても、このいい加減さがある。
だが、いい加減さとはけっして出鱈目さではない。
スピリッツであり、周到に準備されたリスクマネージメントなのだ。

14

ガチョウと黄金の卵

10数年前のベストセラー、S・R・コヴィーの「7つの習慣」に、こんなくだりがある。
それはイソップ物語の「ガチョウと黄金の卵」からの引用だ。

ある貧しい農夫がある日、ガチョウの巣にキラキラと輝く黄金の卵を発見した。念のために調べてもらうと、それはほんものの純金でできていた。翌日も、またその翌日も、ガチョウは黄金の卵を産んだ。農夫は大金持ちになったが、財産が増すにつれて、欲深くなった。とうとうガチョウの腹を割いて、中をしらべてみたが、そこには何もなかった。

成果(利益)と成果を生み出す能力(ヒトモノカネ、情報、技術など)とを、バランス良く経営していくことが大事ということだ。

しかしコヴィー氏は、それはいずれ欲望を満たそうとする発想にすぎないと指摘する。

氏の著述は実は、単純な成功のための自己実現のためだけに書かれている訳ではない。

ガチョウはなぜ、この農夫に黄金の卵を産んでみせたのか?
みずからの死をもって、示したかったのは何なのか?

それは、ガチョウの人生を、農夫が自分の幸福ためだけに利用するなということだ。
ガチョウが効率よく黄金の卵を産み続けることだけを、経営の目的にしてはならないということだ。

農夫はほんとうは、黄金の卵の価値を私的幸福だけではなく、公的幸福にも使うという発想が必要だったということ。

そしてまた農夫には、ガチョウが黄金の卵を産み続けるという仕事に、やりがいと使命感を見出し、幸せな人生を送れるように、支え合いながら生きていくことが求められていたのだった。

15

ペギー

今日はペギーのことを話すことにする。
ペギーはボブ・コンクリンの著作『説得力』で紹介されている、私がマーケティング、とくに感情移入について考える時にいつも出てくる女の子だ。

彼女は幼い頃太っていたため、友達から何かとからかわれた。
家に帰ると母親からは、勉強しなさいとガミガミ言われたが、一向に成績は良くならなかった。
ペギーは絵を習いたかった。しかし父親に反対され、作文を習いに通わされた。
それでも、歯列の矯正をして貰って、彼女は娘に成長する。
そして、あなたの目前に現れる。

そこであなたはどうするか。どのようにペギーに接するか。
コンクリン博士は、彼女の生い立ちを知ってしまったあなたは、もう、ペギーをないがしろに出来なくなっているであろうと看破する。
そしてペギーの人生に積極的に関わるため、自分に何が出来るだろうかと考えているはずだと。
もう彼女が太っているとか、成績が良くなかったとか、歯が矯正だとか、そんなことは関係なくなっている。

そしてコンクリン博士は、こうも言っている。

「ペギーとはあなた自身の事ではないか」と。

16

ワグネリアンって?

ある人から私のプロフィールにある、ワグネリアン歴30年て何のことですか?との質問があった。

簡単に言えば、19世紀ドイツの作曲家・劇作家の、リヒャルト・ワグナーのファンだということ。
おしまい。

というと怒られそうなので、私の好きなワグナー劇のシーン、ベスト3を発表しよう。

第3位
イゾルデがトリスタンとの不倫が、けっして媚薬のせいではなく、自分の中に無意識だが秘められていたものではないかと気づくところ。

第2位
マイスタージンガーのヒロイン(名前をど忘れした)が、どう見ても本当は靴屋のマイスター(ハンスザック)に惚れているじゃないかフラグ立ちっ放し。ところが当のザックは、、その娘さんが歌合戦の「人間賞品」になってしまったのに、どこぞの流れ者に加勢してそいつを優勝させてしまう。

第1位
ブリュンヒルデが、父の神ボータンに殺された夫ジークフリートの後を追って、荼毘の炎に身を投げる。すると、その火が、神の国ワルハラに燃え移り、もう神さえもどうすることもできない。
それでも、指輪はラインの娘たちの元に無事かえる。

それでどうすんのよ。
と、私たち観ている方がマツコDXばりにア然&ブ然としてしまうが、4夜に渡って繰り広げかれた物語はめでたし&めでたしで終わる。

いやあ、ワグナーはすごい。凄すぎる!

17

(仮想)永久機関

ドクター中松氏の著書『クリエイティブパワー』を読んだ。
ドクターはこれからの新しい時代を創造するキーワードは、「宇宙」だと言う。
宇宙の成りたちを知る科学や、宇宙に向かっていく技術を開発することが、日本の危機を救うことにもなると説く。

ドクターの特許第一号は、なんと14歳の時の発明で「無燃料暖房装置」。
空気を急激に圧縮することで熱を出すという理論を利用したのだった。
この発明は最近になって、「エコキュート」という商品になった。
実に63年目。

さて、スーパーカミオカンデで計測され、その存在を知られるようになった宇宙線粒子。
中には加速器の1億倍ものエネルギーを有しているものも存在しているという。
ドクターは実は新型飛行体の推進装置に、この宇宙線エネルギーを利用できないか、
あるいは、「エネレックス」と命名した水の原子の分解装置が取り出すエネルギーを使えないか、現在研究中という。
実現すれば何も要らないか、水を積んでいくかで、永遠に飛び続けることができる。
それはまさにUFOだ。
まさか!
と思う勿れ。
かつて、マルコーニが無線の技術を思いついたとき、友人たちは、彼を頭がおかしくなったと部屋に閉じ込めて外出させなかったというではないか。

18

老和僑となれ

ユナイテッドリーガル社の陳代表の輸出ビジネスに関する著書を読んだ。
その受け売りだが、三つの言葉を披露したい。

「老華僑」
かつて、住み慣れた母国中国を離れ、海を渡り、外国に根付いた一世たちのことを、尊敬の意を込めてそう呼ぶそうだ。

そして、何もない裸一貫から身代を築くことを、
「白手起家」という。

他国での暮らしと、危険と背中合わせのビジネス。

その労苦は想像しえない。
陳氏は華僑二世だが、われわれ日本人に、ぜひ日本という国のワクから飛び出して、現代の「和僑」になって欲しいと語っている。

僑とは、懸け橋の意味だ。そして、
「白手起家」の本質は、
他人と違うことで成功することだ。

どのようなビジネスかを問うものではない。
後に続く者たちに背中で範を示すことが、今は求められているのだ。
特に輸出とは自国の物を他国に売ることだ。
国の豊かさは、その行為に懸かっている。
日本の将来を憂いているなら、輸出を拡大することだ。
個人事業のレベルからでも、それは可能なのだ。

世界を相手に、
「白手起家」で行こう。
そして、「老和僑」と呼ばれよう。

19

一石三鳥

ドラッカーの『非営利組織』にこんなくだりがある。

ドラッカーが長年教鞭を取っていたカリフォルニア州のクレアモント大学は、他大学に比べ財政状態が良好だったが、その理由についての、彼なりの見解である。

それは、
遡るに1920年代に当時の学長が、「大学」というニーズは必ず高まる。ところが大学運営には相当な資金が必要。将来必ず枯渇するだろうと予測した。
そこで学長は自らたくさんの企業を創業、数年かけてそれぞれ軌道に載せた。
そして、卒業生にそれらの企業を任せた。
はじめの20年間は何もなかったが、卒業生たちはそれぞれ業容を拡大させ、大学の強大な支持層・資金源となった。

故にドラッカーは非営利組織に必要なのは、資金を調達する戦略だと説く。

それで私は、初代征夷大将軍・坂上田村麻呂が、夷狄を打ち破った故事を思い出した。

大将軍は敵がゲリラ戦で挑んできたのを見て、兵士を並べて戦い合うという今までのやり方を惜し気もなく棄てる。
そして兵士を使って敵地を開墾・稲作をし、軍の食糧を確保すると伴に、民たちにも稲作を教えた。
生活安定を得た住民たちは、歓迎の意を示し、敵将アテルイは最後には戦わず降伏したという。
武力ではなく、経済戦を征したのだ。

田村麻呂とドラッカーは、よく似ている。

20

時間の管理

小林秀雄によると、詩人ヴォルヌールは若い頃、聖書の虜になった事を悔いて、「バイブルに焼かれた」と自嘲したそうだ。
となると、さしずめ私たちミドル層は、野口悠紀雄教授の「超整理法に焼かれた」クチだ。

教授に薦められるままに、

押出しファイリング

を試しに実践。
A4サイズが入る郵便封筒の使い古しを、オフィスの同僚に棄てずに集めるようお願いしたっけ。それはともかく、あれから15~16年経ち、書類の保管が上手く出来て、お目当ての書類をパッと取出せるのかと問われれば、ノーと答えざるを得ない。

とくに私など悩み大き輩は、その姉妹本、「続超整理法・時間編」というのまで読んで、超整理手帳に取り組んだこともある。

これは一種の惚れる世界だ。
信仰といっても良いほどだ。

このテのものにめちゃめちゃ弱い私は、ドラッカー、ナポレオンヒルと流れてきて、ついこの前まで、トニーブザンのマインドマップに凝っていた。
しかもいずれも自己流だ。
まともに身に付いているものは一つとしてない有様だ。

とはいえ、振り返ると、やはり私は、時間管理がしたいのだ。
潜在的に死を恐れるが故に、有限の時間を常に意識している。

まあ、こうした道草は嫌いではないから。。。

21

時間の管理パート2

『超整理法・時間編』の中で野口悠紀雄教授は、デジャビュ(既視)について、『徒然草』から引用しているので、私も引用させて貰おう。

如何なる折ぞ、ただ今、人の言ふ事も、目に見ゆる物も、我が心の中も、かかる事のいつぞやありしかと覚えて、いつとは思い出でねども、まさしくありし心地のするは、我ばかりかく思うにや。(第71段)

いえいえ、兼好さん、あなたばかりではありませんよ。
私なんかはしょっ中です。(>_<) かつてフロイトと対立した、フランスの脳学者ベルグソンは、脳は記憶を保存する所ではなく、記憶を消す装置なのだと説いた。 ベ博士の説が正しいなら、デジャビュ(既視)は消し切れなかった記憶の断片だ。 となると、私の脳はいつも少し怠けていることになる。(>_<)

人類の歴史も、冷徹に事実を並べてはいる訳ではない。
歴史の書き手、あるいは語り手の、思いが重く、大きいものが今に残っているのだ。
とくだん深く刻み付けられた記憶は、ちょっとやそっとのことでは、消えやしない。
歴史とはわれわれ人類にとって、主観的なものの羅列。
とくに、今を生きる私たちの何かの役に立っているものは、残っていく。
生きている。

だから、時間を管理するとは、未来の自分を計画することのように見えるが、そうではない。
自分の記憶に深く刻み付けられるような、大きな仕事を残すことだ。

22

野球脳

プロ野球がキャンプインというニュースをテレビで見ていて、
かつて私の次男が小学校の野球チームに入団したのを機に、私も43歳から、突然野球のコーチを数年やったことを思い出した。
最初はキャッチボールもままならなかったのに、バッティングピッチャーとして200球、300球と休み無しで投げられるようになった。
20人の子供達相手に、2時間程度のノックもした。

それは村上豊氏の『科学する野球』というテキストに出会ったからだ。

村上先生の理論は身体の各部の使い方にある。
例えば、「気をつけ」の姿勢から「前へならえ」をして、真っすぐ両腕を伸ばす。
そのまま、手の平を手首だけ曲げて、甲の方に倒す。次に掌の方に倒す。親指側。小指側も同様に行う。
それから、手首を曲げないで、手の平を空に向ける。元に戻して、地面に向ける。
この6つの形はそれぞれ力の加わり方が異なる。
手首ばかりではない。肘、肩、腰、股関節、膝、足首。
人間としてもともと強く力を加えられる筋肉と、鍛えないとダメな筋肉がある。
野球選手は全身に、野球選手特有の筋肉を付けていて、それをビミョーに操りながらボールを投げたり、打ったりしている。
だから、80メートルとかの遠投をしても、相手の胸元に投げられるようになっている。
もちろんボールの握り方や回転のかけ方もあるだろう。
それでも、力まかせにはやらないのだ。
それに握り方や回転のかけ方も、そうした筋肉がつくり出すものだ。
逆にいうと、ビミョーなところで、ストライクが入らなくなったり、ホームラン性の打球が凡フライになったりする。
スランプというやつだ。

また、野球ばかりでなく、他のスポーツや様々な職業も、この身に付けた筋肉を無意識に動かして仕事をする。
肝腎なのは、間違った身体の動かし方を続けて、変な筋肉を付けてはならないということだ。
そのために、イチローやダルビッシュらは、この時期、意識的に各部の筋肉を動かしチェックする。
常に基本動作から入っていく。
出せる結果が大きく違ってくるからだ。

23

タイツ先生

野球の話を書いたら、反響があった。
正直ちょっと嬉しい。

ということで、今回も野球の話。

栃木県で整体をやってらっしゃる、タイツ先生こと、吉澤雅之氏。
先生は自分の筋肉の動きを見せるために、赤い全身タイツ姿。
とうぜんもっこりしていて、見ているほうがちょっと恥ずかしいぞ。

数年前、雑誌『野球小僧』に連載されていたので、コーチ業に役に立つかと思い、毎月立ち読みさせていただいた。
すいません。

タイツ先生は、野球の上達は、ピッチングとかバッティングとかの一連の動作に、ONとOFFを作りだすことだという。
力が入った状態がON。
抜いている時がOFF。

わたしたち凡庸な野球の指導者の誤りは、選手に余分なONを強制するところにあるとも。。。
例えば、「キレが悪い」とか、
「腰を廻せ」とか、
「脇が甘い」とか、
「強く叩け」とか、
とにかく、選手に力を入れろと言っている。

ところが、一流の選手は、逆に力を抜いている。

斎藤佑樹はピッチング動作で、軸足を前に出す時、両腕の緊張をいったんOFFにしている。
早大で調子が落ちていた時は、左腕が脱力せず、逆に遅れてくる右半身をリードできていなかった。
松井秀喜は一旦胸にガッと集めた力を、フォロースルーのところで抜いている。
それがあの飛距離を出す要因なのだ。

タイツ先生はそれを身体に覚え込ますためには、そうした一流の選手のモノマネをしましょうという、大胆かつユーモラスで、そいでもって納得のいくご指導。

ここ一番という時の、一瞬のOFFが、むしろその道での成功者になる秘訣かも知れない。

24

3Sが大事

昨年売れに売れた「もしドラ」は、野球関連図書でもある。
試合のヤマ場で勝利のきっかけを作るのは走者だ。
よくできている。

実は野球でチームに勝利をもたらすのは、時速150キロを超える豪速球ピッチャーばかりではない。
柵越え連発の大型スラッガーのことでもない。
それは走者。
しかも、盗塁。

元読売ジャイアンツで「青い稲妻」と呼ばれた、盗塁王、松本匡史氏は、盗塁を成功させる3つのSについて述べている。

整理・整頓・清掃ですか?
いいえ、違います(^O^)
あなた、そうとうなワーカーホリックです。

松本氏のそれは、走者の持つ能力。スタート、スピード、スライディングの3Sのこと。

そして、試合の局面を読み、ピッチャーの癖や、キャッチャーや相手ベンチの盗塁阻止の意図を盗む目利きと
強い意志ことだと。
それなら、SeeとSpiritsで、5Sですかね。(^◇^)

テレビ観戦だと、ピッチャーとバッターの対戦ばかりだが、
球場に行くと、ランナーが試合のカケヒキ、試合の面白さをつくっているのがわかる。

盗塁って、とうぜんリスク満載だ。
ここで、バッターがヒットを打ってくれるのを待つのか。
味方ベンチが出す送りバントやエンドランや、「何球目に絶対走れ」とかの指示をただただ待つのか。
失敗したらどうしよう。ベンチの指示なら仕方ないとか、いろいろ頭をよぎる。

ええい、それとも、みずから仕掛けるか。

松本氏も一軍デビューでの最初の盗塁は、とにかく無我夢中で走った思い出しかないらしい。
ところが、氏が味方の安打で無事生還。それで試合は同点となり、延長で逆転勝利を収めた。

あの間一髪を征した者に、勝利の女神が微笑んだのだ。
あの間一髪に勝利を賭けた者だけが、見た世界があったのだ。

25

未来を作る人の戦略

古川薫氏の訳注で、吉田松蔭の『留魂録』を読んだ。
今回はその『留魂録』が世に出るまでの物語である。

ご存知だと思うが、松蔭は幕府転覆を企てた容疑で、小伝馬町の牢獄に送られ、処刑された。
『留魂録』は死を予感した松蔭が処刑の前日、大急ぎで書きあげられた言わば、ダイイングメッセージである。。

翌日門下生らが松蔭の遺体を引き取りに行き、遺品も下げ渡された。
その遺品の中に、『留魂録』も含まれていた。
門下生たちは『留魂録』をひそかに回覧した。
郷里長州にいた高杉晋作らもこれを読み、きっとこの仇(かたき)を討たずにはおくまいと、おおいに倒幕の意志を燃え上がらせたのであった。

彼ら門下生はそれからわずか数年の間に、割腹自殺8、陣没3、討死2、斬首1、獄死1を出しながらも、みごと倒幕を果たす。

ところで、『留魂録』はそうしたどさくさで、所在不明となった。

今、私たちが読むことができる『留魂録』は、松蔭と同じ牢やにいた囚人・沼崎某が所持していたものである。
沼崎は入牢してきた松蔭に、孫子や孟子の講義を受け、すっかり松蔭信奉者となった。
彼は松蔭から密かに『留魂録』の後事を託されていたのだった。

松蔭は『留魂録』をまったく同文で2通書いた。
そして一通を遺品に紛れ込ませて、郷里の門下生たちに届くようにと指示した。
しかしこれは司獄官に没収されるリスクが高かった。
そこでもう一通を沼崎に、沼崎自身が出獄したら誰か長州人に渡すようにと託したのだった。

沼崎はそれからまもなく三宅島に流された。
もともと冤罪であったにもかかわらず、彼が許されたのは、なんと明治7年。
江戸は東京となっていた。
それでも彼は、禁門の変で討死した入江九一の弟を探しだし、松蔭の執念を遂げさせた。

さて、『留魂録』はダイイングメッセージである。
郷里に送られる時、「この書は極々同志の人でなければ決して他見は無用なり」と添え書きされていた。
字面だけ追って理解したつもりになり、結局何もしないなら読むなということだ。

松蔭の薫陶を受けたほんのわずかな魂の持ち主だけが、師のメッセージの奥の奥を知り、決起するのである。

現代の私たちは読むことはできるが、読むことができるというだけのことだ。

26

わが町、古河

私の住む古河には、かつて河川交通の要衝で、河岸(かし)といわれる船着場があった。
高瀬舟が、江戸の深川扇橋から、江戸川~利根川~渡良瀬川を上ってきていた。
そこでは荷物の積み降ろしに、大勢の人足たちが働いていた。
明治10年には内国通運の蒸気船が毎日定時に就航。
よっぽど人の往来や物資の商いが盛んだったのだろう。
今は古い町並みを残すだけだが、民間人が経営した銀行もあったし、花街もあった。
町の真ん中を南北に日光街道が通っている。往時の面影を残す松並木がある。
そう、古河は街道宿場町でもあったし、幕府の老中や大老を出した譜代大名の城下町でもあった。
またそれより以前には、足利尊氏が四男を公方として置いた。
政治戦略上、関東の重要な拠点でもあったのだ。
その館跡は今では私の散策コースだ。

そういえば、恋人義経を追って奥州に向かう途中、静御前が病に倒れた場所も近くだ。
静はその直前、奈良で捕縛され、鎌倉に移送。
頼朝の御前で、白拍子として踊らされた。
有名な、「しずやしず・・・」はその時の謡いだ。
お寺には、遺品の舞衣が残っている。
その衣は、京で雨乞いの舞を舞って見事に雨を降らせたその褒美に、後白河上皇に賜ったものだと伝わっている。

27

桃むすめ


古河には桃林があり、毎年3月下旬に、一斉に花が咲く。
公園はイベント会場となり、他県からも大勢の人が集まる。
そこで最も注目を集めるのが、桃むすめ達だ。
4人ほどのむすめさんたちが淡い桃色の着物に、「桃むすめ」と書いた襷掛けで微笑む。
とうぜん、ここぞとばかり、写真を並んで撮ってもらったりする。私はせいぜいそんなもんだが、年端もいかぬ子供らが、肩に手を廻したり、手を握り合ったり。頬っぺたをつんつんしたり、ほんとうに、いけない子供たちだ。

先日地元ケーブルテレビでオーディションの様子が映っていた。
まだまだ寒いのに、もう春満開の準備が始まっている。

孔子の質問(どんな質問だったか忘れてしまった)に対し、弟子が、
「私は春には、おとなの友人五六人、子供達六七人と一緒に川遊びに出かけて、雨乞いの舞台で休み、日が暮れたらみんなで歌を歌いながら帰ってまいりたいと思います。」 と答えた。
孔子はいたく感心したそうだ。

と、うちの者が、「パパ。あれは桃むすめじゃありませんよ。華むすめですよ」などと言う。

テレビを見直すと、確かに「華むすめ」だ。

いや、それなら、私は声を大にして言いたい。
断じて、「桃むすめ」でなければならない。

28

とにかく6人に電話をかける

ジェフェリー・ギドマーの『営業の赤本』はいつ読んでも、私にぐいぐい迫ってくる。

「お客はなぜあなたの商品を買うのか」それを考えろと。
「なぜ買うか」ということは、「いかに売るか」ということよりも1000倍重要なことだとも。

それでまだ分からなければ、「とにかく6人に電話をかけてみよ」。

そして実際に会って、「彼らのビジネスを成功させるには何ができるか、話をすること」だ。

それを何日か続けて、もう電話をかける相手がいないと思うものなら、

「自分のケツを叩け」。

そしてケツを叩くときは、「すり切れるほど叩け」。

最近読んだ岩松正記氏の『経営のやってはいけない!』にも、こうある。

社長の仕事は『営業』~ちょっとでも時間があったら、営業をしよう。

「営業に自信のない人は経営者になってはならない」~起業しようとする人への警告だ。
良いビジネスモデルがあるからとか、
なかなか取れない資格を持っているからとか、
信用できる協力者がいるからとか、
それで食べていけるほど、甘くはないのだ。

本田健氏の『ユダヤ人大富豪の教え』は、不自由人から自由人というプロセスを追うドラマだが、
その秘訣中の秘訣は「セールスの達人になる」ということだ。

自分の生まれ、学歴、職歴、資格、実績、地位に縛られた、不自由な人たちのなんと多いことか。
思い通りの人生。ほんとうの自由を手に入れるには、まず「セールスの達人になる」ことだ。

それで、セールスの達人になりたければ、
自由人の道を歩みたければ、
ジェフのご指南どおり「とにかく6人に電話をかける」ことだ。

29

石橋をたたいて渡る

鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの自伝に、カーネギー自らが手掛けた最初の事業のことを述べているくだりがある。
それは、カーネギーが鉄道会社に勤めていた関係で、鉄橋をつくる専門会社キーストン橋梁製作所を1863年に立ち上げた話である。
創業まもなく、オハイオ川に300フィート(91メートル)の橋を架ける工事を受注した。

ところが、問題は山積していた。
当時としては大工事で、世間では不可能だと取り沙汰されていた。
これまで橋梁の仕事に従事した会社はことごとく失敗していた。
実際にアメリカの鉄道事故の多くは橋の墜落だった。
中には強風にあおられて落ちるものさえあった。

そこで、カーネギーが取った作戦はこうだ。

まずは最高の技術者を集めた。
そして、最良の資材を使った。
それから、安全が科学的に承認された設計のみ着手した。
さらに、自らの作業を厳重に検査した。
ついでに、第三者の査察を歓迎した。

何だあたり前のことをしただけではないか。。。
そのように見えるが、カーネギー自身、この営業方針こそ成功の秘訣だと語っている。
「どこでも自分の事業で、最高の水準に到達するのはそんなに難しいことではない。
それでもどこも、そのような正直な仕事をしようとしない。
ところがどうだ。
正直な仕事をしない会社が成功することは絶対ありえないのだ。

たしかに競争は激しく、なんでも価格だけでものごとが決められていくと思われがちだ。
しかし、成功する根本の原則は、仕事の質にある。
会社の上から下までひとりびとりが、仕事の質に全精力を集中することが求められているのだ。」
ここにアメリカの心がある。

「仕事の質」を大切にしようというところにか?

いいえ、そうではない。

ほんとうによい仕事をしたカーネギーを、億万長者に押し上げることに成功した、自由の国アメリカの心である。

30

波動の正体

素粒子物理学の世界は、いま「波動」研究が根幹をなしている。
日本人のノーベル賞受賞者は、湯川秀樹博士以下この分野で多い。
日本の御家芸だ。

海面波、地震波、音波、電磁波の研究と、電子レンジ、テレビ、携帯電話、日焼けの原因阻止、ガン治療への応用。

光も電磁波の仲間であり、目に見える可視光は、わずかな幅の波長でしかない。あとは目に見えぬ波長である。

色即是空、空即是色。

般若心経のよく知られた一説は、電磁波の波長レベルで例えられる。

色とは人間の目に見える世界。
空とは見えない世界。
しかし、別々に存在している訳ではない。
色とは空の一部であり、空を見ることはすなわち、色の本質を知ることであると。

龍樹の天才は現在の素粒子物理学を超越しているのかも。

というのも、最新の量子論だと素粒子とは、小さい小さい粒子ではなく単なる波だ。
素粒子は実は、波の性質を持ち、空間に広がって存在する。

そして、干渉すると打ち消しあい、消え去り空に。共鳴しあうと色となり物質化する。

ある高校野球の女子マネージャーが「野球部を甲子園に連れていく」と、強く思いを発信しはじめるとどうなるか。

彼女ははたして、野球部の仲間たちばかりか、天や地までを味方にした。
むしろ私は彼女がどうしてそう思い込むようになったのか、不思議でならない。

31

細胞の死

細胞というのは極めて完成された組織である。
ご存知のとおり、細胞の寿命は永遠ではない。ヒトのような多細胞生物は、細胞が死んでいけばやがて個体の命も尽きてしまう。
そこで細胞はみずから分裂することで増殖し、その数を維持してきた。
現在生きている生物のあらゆる細胞は、じつに30億年もの間、細胞分裂によって脈々と生き続けてきたものである。

細胞分裂のプロセスはこうだ。

まずは遺伝情報DNAが正確にコピーされる。
次にそのDNAが凝縮、染色体となる。
中心体が分かれ、核膜が消失。
二つの中心体が、染色体をそれぞれ引き寄せる。
均等に二分されると、核膜が再生。分裂が完了する。

キーワードは「はじめに設計図がある」ということと、「最初に遺伝情報をコピーする」こと。そして「必要に応じて壁を取り払ったり・再生したり」することだ。

そして驚くべきことに、細胞は自殺もする。

細胞は外的刺激・紫外線・体内活性酸素などで、つねに劣化の危機にさらされている。
研究によると1秒間に6箇所の割合でDNAが傷つけられている。
細胞にはDNAの傷を修復する機能が備わっているが、修復が間に合わないケースが発生する。
正常なタンパク質を作れず、ガン細胞となってしまうものもある。
そんな時、細胞はみずからの命を絶ち、消滅してしまう。

そうなると、はじめに設計図を考えたり、ついには自殺をしたりする仕組みは、誰が作ったのだろうか。

32

雪の華

我が町、古河は別称「ゆきはな」と言う。
雪の華のことである。

江戸後期の古河藩々主・土井利位は雪が降ると、雪片を顕微鏡で観察。趣味が高じて、1832年(天保3)に『雪華図説』を刊行した。
続編も併せると、なんと183種類もの雪の結晶を記録した。
彼は絵図を描くのに飽き足らず、工芸家に命じ刀装・印籠・硯箱・着物を作らせた。この雪柄模様は大いに江戸で流行ったという。
こうした功績もあり、古河は豪雪地域でないにも関わらず、別名「ゆきはな(雪華)」というのである。

かつて、森高千里さんの「渡良瀬川」が大ヒット。
近在の足利市がすかさずご当地ソングにした。
それに倣って、中島美嘉さんの「雪の華」という歌を古河のご当地ソングにしようという話が持ち上がった。
内容も永遠の愛を誓う名曲で、今でもよくカラオケで親しまれていると聞く。
ところが、何故か破談した。残念でならない。

33

落ちてきた免疫力

風邪をひいた。
三連休がほんとうに三連休になった。

東京理科大の阿部教授は、それは免疫力が落ちているからだと指摘する。

異物の侵入を防ぐ第一の防衛線を、自然免疫という。生れつき持っているもので、皮膚や粘膜が主戦場だ。NK細胞やマクロファージなど、異物を見つけるとみずからの細胞内に取り込み、活性酵素で破壊する。

それでもこれを突破される場合がある。そうした場合、侵入してきた異物に対し狙い撃ちをする攻撃システムを発動させる。
これは脊椎動物のみが進化の過程で手に入れた第二防衛線、獲得免疫だ。敵の特徴に合わせて抗体を作ったり、破壊したりするのだ。

さて、第一防衛線が苦戦しはじめると、発熱・せき・炎症となって現れる。風邪の症状である。

この自然免疫兵士らの救援要請に対して、獲得免疫防衛システムが起動する。
キラーT細胞は、骨髄の中の造血幹細胞から生まれる。
彼は幼く未熟なまま、必殺のミッションを背負い放出され、リンパ液に載って身体を巡る。
その僅かな時間で、自然免疫細胞マクロファージから得た情報を基に、武器を作り戦術を構成。
そしてリンパ節を活動拠点としてウィルスと闘うのである。

健気である。

確かに加齢によって免疫力は落ちてしまう。
ところが安部教授によると、私たち現代人は愚かにも、運動不足・睡眠不足やストレス、暴飲暴食で、免疫力を低下させているという。
神経と内分泌と免疫のバランスを、わざと狂わす行為は慎まねばならない。
風邪をひいた時は、日ごろの生活を振り返る時でもある。
そして幼いまま戦場で死を恐れず闘っている、キラーT細胞に感謝しよう。

34

神武東征

風邪で寝込んでいた内に、建国記念日を過ぎてしまった。

この日はイワレビコ(後の神武天皇)が苦難の末に、大和を征服して橿原宮で即位した日である。
論説の多くは大和のごく一部を武力で奪い取ったに過ぎないと些か過小評価だが、神武さんの偉さが見逃されていて悔しい。

彼が故郷・日向をあとにした時、既に45歳。
にもかかわらず、ご一行はまず宇佐で食事接待を受けて、すっかり時間感覚を失った。
筑紫、安芸、吉備と宮を移しながら、16年も懸かってやっと難波入り。
いくらなんでもゆっくりしすぎやで。。

現在の東大阪市あたりから大和に入ろうとしたところ、土地の豪族・長脛彦の抵抗を受け、こりゃたまらんとひとまず退散。ここで兄を失う。
そこに、謎の人物ニギハヤヒノミコトが登場。
この騒ぎのなか、彼は長脛彦の妹を嫁にしていたにも拘わらず、西から来た神武一派に加担する。

かつてアマテラスから、「そのうちワシの孫がそっちに行くよってヨロシク♡」、と頼まれていたのを思い出したからだ。

さて、このニギハヤヒ、とんでもない武芸の達人。

天の磐船に乗って生駒山に降臨(宇宙人かい!)、物部一族の祖となった。
刃身2.5m何とかのつるぎという国宝を振り回わされた日にゃ、もう、敵いませんな。
この人物の立ち位置こそ、古代史の謎。
ニニギ系であるかないかで揉めている。それは、高天原出身か、出雲出身かにも繋がるからだ。

いずれにせよ、イワレビコはニギハヤヒと組んだ。
劉備玄徳が諸葛孔明を得たというか、カリスマ社長がスーパー参謀を専務に迎えた感じ(?)で、小さくてもピリッとした企業を立ち上げたのだ。
それからの勢いといったら、町工場が天下を取るあり様。

やっぱ、企業理念が明確で、セールス部隊がしっかり働くとこは強いわ。。。

まあ、彼らの子孫もよう頑張ったがな。

35

サラリーマン染色体

大前研一さんに「サラリーマン染色体」なる説がある。
「お手」と言われたら素直に右手を差し出す事を指すのだそうだ。
「待て」と言われたらいつまで待つし、「こうしろ」と言われたらすぐに路線変更する。

おそらく、これぼど根拠が無いにも拘わらず、本当にそうだよなあとわが身を振り返らさせる学説もあるまい。

それでも一矢報いたいと願う方もいらっしゃるだろう。
文字通り胸に剣を秘めたる者たちだ。
それならば、冒険の第一歩に、1年間の長期休暇をお勧めしたい。
その期間限定で、失うものをもたず、しがらみにとらわれず、ニッチな世界でディ-プにやってみればいいのだ。

東州斎写楽の正体は斎藤某という大部屋能役者だ。

彼はその経験から、役者が持つ個性を大胆かつ巧みに描くことができた。
表情やポーズもダイナミックに捉えることができた。
彼には「表現する」という、欲求があったからだ。
それも抑えきれないくらい切実なものだったのであろう。

彼の中にあるものが、私たちにせまってきているのだ。

彼の活動期間は10カ月にすぎない。その間に140枚余りの錦絵を描いた。
急に始めて、急に止めてしまう。その後、写楽はどうなったのか知る由もない。
それでも彼はきっと満足していたに違いない。
そうであってほしいという気持ちも込めて。。。。

それにしても、1年の長期休暇なんて、とても言い出せないと、お嘆きの諸兄!

そやな。君らの気持ちも分からんでもないけどな。。
ふっふっふ。

36

衝突実験

荒巻基文氏の『仕事力を今すぐ2倍に高める技術』を読んだ。
ぶっちゃけ、この手の題名に弱い。

さて、氏の論点は方法論ではなくマインドである。
そして結論から言えば、職場のギスギス感こそ組織の力へと変換すべきものであると。

歴史上の人物は大なり小なり凡そ組織を背景に突出してくるので、この手の変換力が成果の分かれ目だ。
西郷隆盛と大久保利通とか
渋沢栄一と岩崎弥太郎とか
最澄と空海とか
幡随院長兵衛と水野十郎左衛門とか
宮本武蔵と佐々木小次郎とか
※善し悪しの判断はおまかせします

それから、
聖徳太子と隋の煬帝とか
とくにおもしろい。
太子は国難を背景に日本をガッチリまとめ上げることに成功。
その反面、煬帝は国はでかいのに会ったこともない太子にへコまされてか、暴君となり、酒を飲んでいる間に近衛兵らに殺害された。

北条時宗とフビライも同じような背景だが、太子と時宗では人間の厚みが違うから、変換力がダンチ。
せっかく元寇を斥け鎌倉幕府が全国区になったというのに、戦利恩賞問題で御家人たちを抑えきれず。
時宗自身ストレスからか34歳の若さで病死、その後北条一門からは政治家として彼を継ぐ者は現れなかった。
それはモンゴル帝国も事情は似ていて、以後どちらもインスパイアされぬ関係で、お互いの組織は彼らの死後弱体化する。

ギスギス感を感じているのに衝突を避けているなら、お互いの存在価値を見いだせなくなる。

ギスギス関係は神が意図したもの。職場や会社がギスギスしているなら、避けてはならない。

37

インフレーション

私たちが住む太陽系は天の川銀河に属している。
天の川銀河の外は、広大無辺な空間だ。
その先にはまた、無数の銀河が点在している。
そう言われている。

さて、最初に存在した宇宙は、からっぽの空間だった。
1000億年ほど孤独に堪えていたらしい。
これがあるとき、凄まじい速度で膨張する。
インフレーションである。
そして、膨張の速度が緩む。

しかし、加速されたエネルギーを急には止めることはできない。
空間に放り出される。
あるものは空間壁を突き破り、あるいは跳ね返える。
そして物質化し、光となる。
物質化した光は、ぶつかり合いながらさらに現実に物質を作り出していく。灼熱の炎となって燃え盛る。

ビッグバンである。

要約すると、最初に存在したのは高次元宇宙で、それがエネルギーの疎密から低次元宇宙を作る。
その低次元宇宙が、光を構成する微粒子の濃淡で、さらに低次元宇宙を作っていく。
私たちの宇宙とは、粗い物質で構成された、だいぶ低いレベルの宇宙である。

最初に存在してた高次元宇宙は今も膨張中で、インフレーションのさなかにある。
物質化していないばかりか、タテ×ヨコ×高さがないので、とうぜん大きさは計ることはできない。

38

目線の違い

3PLサードパーティーロジスティクスという言葉はご存知だろうか。

物流業務を包括的に受託する事業者という意味で、ソリューション機能を有している。

まあ、普通はそう言われている。

ところが私は3PLとは、共同配送が出来る運送業者のことであると思っている。

と、そんな風に突っ掛かっても意味のない議論である。もともと実態なんて無いんだから。

ところが最近、山田史生氏の『下から目線で読む孫子』を読んで、考えさせられた。
ものの見方の違いはやはりあるものだ。しかも厳然と。

こちとら、もの心ついた頃から孫子にかぶれてんだ。と、息巻いたところで、山田氏の著書を読みすすめると、何か違う。

むかし、上海でケンタッキーフライドチキンを食べたのを思い出す。
何か違う!

「勢とは利に因りて権を制するなり。」
勢いがあるとか無いとか、そんなことを言っているのとは違うだろう~なんて、突っ掛かってしまう。

まぁ、山田氏もわざわざ『下から目線で読む~』とタイトルで言っているんだからね。

そりゃ、違うでしょ。
目線が。

39

地動説ふたたび

私はどんなに深夜になろうとも、駅から自宅まで歩いて帰る。
田舎道だから、街灯もまばらだ。おやじ狩りに遭うかも知れない。
それでも、冬の夜空を眺めながらブラブラ歩く。

星座は季節によって規則正しく巡っている。
それにひきかえ、星座の間をうろつく惑(まど)う星があるという。火星、木星などである。
惑っているから惑星。
古代からこの惑星たちの動きこそ、科学者たちを悩ませた。

前5世紀、ピタゴラス学派の科学者たちは、長い年月をかけて、天体を観測。
地球を中心に回転する宇宙の姿を描き出した。
2世紀のプトレマイオスは、さらに二重の円運動を加えると共に、地球の中心をビミョーにずらして、天動説を完璧に証明して見せた。
ローマカトリックにとっても天動説は都合良かった。16世紀、コペルニクスが現れるまでは。
ではコペルニクスはいかにして天ではなく、われわれの立つ地が動いていることを見抜いたのだろう。

実は彼は、天動説が、幾何学上、美しくないと感じたのだ。
彼は複雑な運動をする惑星の動きの中に、真理があるとは思えなかった。

根本からそれまでの地球中心の宇宙像を見直し、太陽を中心にしたほうが簡単に計算できることを発表した。

地動説は異端の烙印を捺されたが、彼には神は単純にものを造るのだという信念があった。

それこそが、コペルニクス的転換の原点である。

それにしても、夜空を眺めながらブラブラする私には、足元の地が動いているとは思えないのだが。。。

40

輝ける『iPadバカ』

美崎栄一郎氏の『iPadバカ』~先日丸の内丸善に並んでいるのを見つけ、早速購入、早速読んだ。
iPadもさることながら、美崎氏は研究対象に真摯な態度で臨んでいる。
何より著作を進めながら、スケジュール帳を捨てたり、PCから離脱したり。おのれの生き方を変えてしまっている。

過去を未練なく棄てれるものなのかと、ちょっと驚く。

小林秀雄が岡潔との対談で野球の話をしている。
「たとえば野球の選手がだんだんむずかしい球が打てる。やさしい球を打ったってつまらないですよ。ピッチャーもむずかしい球をほうるのですからね。つまりやさしいことはつまらぬ、むずかしいことが面白いということが、だれにでもあります。」
そして成功する野球選手は、学問する野球選手のことだと言っている。

美崎氏は実は簡単には入り込めない領域に踏み込んでいる。

iPadバカになり切ると称してはいるが、並のビジネスマンの技量を超越してしまっているのだ。
ゆえに、後に続く者を魅了する。

41

炎上するリビア

リビアでの反政府デモは、一層の激しさを増している。
世界各国では、独裁者の命脈より、リビアでの政情不安定さが招いている石油価格の高騰の方に関心がある。
そうか今では、リビアは世界有数の石油産油国なんだ。
(◎o◎)!!

第二次世界大戦中の1942年、ドイツのロンメル率いる戦車隊が、トリポリを発ってエジプトを目指していた。
映画「カイロへの5つの墓」で有名な北アフリカ戦線である。

ロンメルは、この砂漠の中で戦車燃料の確保と戦っていた。
というのもイギリスがエジプトでの権益を守るために、地中海でドイツの輸送船をヤッキになって撃沈させていたからだ。

マーチン・クレフェルトの『補給戦』で、語られているのは、けっして補給の無視からくる、敗戦ではない。
あるいは補給の成功からくる、戦勝でもない。
スウェーデンの英雄グスタフアドルフはライン川を利用した。プロシアの大モルトケは鉄道を敷いて物流網を構築した。

勝ちに不思議な勝あり、負けに不思議な負なし。

第二次世界大戦中、リビアでは、ドイツとイギリスが補給線を確保するための死闘を繰り広げた。

炎上するリビア。
あの延々と続く砂漠には、石油ばかりではない何かが埋まっている。

クレフェルトの『補給戦』については、また近く話をしたい。

42

投票のパラドックス

聖小学院大学の松原望教授が、多数決システムを科学的に分析。
けっして最良のものを選んでいる訳ではないことを証明した。

7名の人間がそば・カレー・ラーメンの3種類の内、どれが食べたいか多数決をとってひとつに決めるということになった。
すると、3名がそば、2名がカレー、2名がラーメンということで、その日の昼はそばになった。
ところが、カレーとラーメンを選んだ4名は、そばは食べたくないのだった。
要するにこの時の多数決は、3名の幸せ者と、4名の不幸せ者を生んだのだ。

選択肢が3つ、投票者が7人のときは、(1×2×3)の7乗で279,936通り、投票のパラドックスが起きるのは8.4%で、23,514回発生するとのこと。
松原教授はこうした投票のパラドックスはめずらしくないと分析している。

ナチスドイツも選挙を勝ち抜いて、しごく合法的に政権を奪取した。
困窮している人々はちょっとしたことに熱狂するもの。

そういえば、ドラッカーの社会生態学者としてのデビューは、全体主義への懐疑からだった。

43

日々ストレッチ

一般的に身体がかたいと怪我をしやすい。
体の柔軟性は、関節が動く範囲の広さと、動きやすさのこと。
すなわち柔軟性があるというのは、関節が広い範囲に、少ない力で簡単に動くということだ。

酪農大学の山口太一講師は、「トレーニングによって、だれでも体はやわらかくなります」とのこと。

というのを、わたしは守っている訳ではない。

いたって不摂生な輩である。

数年前にサッカーをして右足の肉離れをしてからは、ほんとうにイケない。

山口講師によると、関節を動かす筋肉は対になっていて、一方が縮めば一方が伸びるという。
ところが、筋肉に急にかつ強烈な刺激を与えると、対になっているふたつの筋肉が、両方とも縮む。どちらか一方が耐えきれず、断裂してしまう。

わたしの運動歴は登山と野球ぐらい。脚の筋肉はただ歩くかただ走るかだ。

ところが、サッカーはボールを蹴るのにも使う。
たしかにわたしが肉離れをしたのは、走りながらボールを蹴った瞬間だ。

医者はわたしの脚を触りながら即座に、あなたはこの肉離れが治ったとしても、金輪際サッカーをしてはならないと強烈なダメ出し。

はい、分かりました。(ほっといてくれ)

身体がかたい人は血管もかたい。
ついでに、頭もかたい。

44

遺伝は何を伝えていくのか

東京中野にある東大付属中学・高校には双生児枠があり、大勢の双子ちゃんたちが学んでいる。

面白いのは、一卵性双生児と二卵性双生児が比較されているところ。

とくに一卵性の場合、身長・体重とも、ほぼ一致。さらに、50メートル走などのスポーツテストでは近似値だという。

学力では、国語・数学・理科・社会の4教科のうち、理科と社会の成績に遺伝の影響が見られるが、国語と数学にはその影響が無いように見られるとのこと。

要因はかなり追求されていて、国語の成績の65%、数学の成績の48%は、なんと、家庭環境とか学校環境とかの、後天的・外的要素が重く作用している分析だ。

じつに興味深い。

そして、参った。

わたしは、国語と数学は、遺伝の影響がモロに出る説を唱えていた関係上、今ここで修正するとともに、わたしの説を聞かされた方々に、お詫び申し上げます。
ごめんなさい。

さて身体的特徴を左右するのは、ご存知、DNAであるが、それ自体はここでは説明しない。

むしろ、個人的にショックだったのは、メンデルの法則で言われる、優性遺伝・劣性遺伝のことだ。

富士額・平な額
二重まぶた・一重まぶた
耳たぶがたれている・たれていない
えくぼができる・できない

これ、左が優性遺伝で右が劣性遺伝。
わたしはすべて右だ。

他にも、野菜嫌い、苦味に弱い、酒が飲めない、メタボ体質、すべてそうだ。

うわーっ。そうだったんかい。

ところで何で東大が双子ちゃんたちを集めて研究しているかと言うと、それは天才遺伝子を追い求めているからだ。
ちょっと信じられないが、世界規模で行われているらしい。

都市伝説だ。

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時間の習俗

松本清張の代表作『時間の習俗』。

事件は神奈川県の相模湖畔で起こる。
ところが容疑者はその時刻、北九州門司で和布刈神事を見物、その様子を撮影していた。
このアリバイトリックを崩さんと、『点と線』の刑事コンビが大活躍。勘と思い込みと度胸を武器に、容疑者に執拗に迫っていく。

そもそも事件の発端で殺されたのは、運送業関係の業界紙の社長。
なんとも胡散臭い人物像だ。
まあ、あんなやつ殺されても仕方ないなと読者の誰もが思っている。
それだけに、刑事たちのアリバイ崩しに集中できるというもの。

さしずめ今なら、殺される役は物流コンサル。しかも、個人事業者。
うーむ。わたしのことかな?
ところで『時間の習俗』の、この「時間」というものを正確に測る原理を発見した人をご存知だろうか。

それは西暦1583年のガリレオ・ガリレイ。
当時18歳。
ピサの大聖堂の天井からつり下げられた、ブラブラ揺れるランプを眺めていた時だ。
この天才は、ランプの揺れ1往復に掛かる時間を自分の脈拍で測り、天井からランプまでの長さに関係なく、また、揺れ自体の大きさに関係なく、つねに一定だと観てとった。
いわゆる振り子の等時性を発見したのである。

時代は下って科学的には、ニュートン力学や相対性理論で、時間の概念は示されるようにはなった。
それでも、過去から未来へと流れていくわたし達の時間感覚に、納得する説明はない。

時間に決まった向きなどないとする科学的立場と、われわれ普通の人間が持っている時間感覚にズレがあるのだ。

タンパク質をグルグルかき混ぜても生命を得ることができないように。
宇宙の果てを解明できないように。
時のはじまりも不明なままだ。

まあ、ミステリーは時間の厳然さが背景にあり、時間の正体を究明する必要はないんだけどね。

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ギャンブル気質

確率の話。

天気予報、偏差値、打率、視聴率、当確予想、保険料率。
はたまた、迷惑メールの仕分け、ランダムウォークといった最新テクノロジーも確率から生まれたものだ。
物流・ロジスティクスの分野でも、TMSやERPは、中身は確率からくるロジックだ。

トランプの場合、ポーカーで最初に配られた5枚で、フルハウスの役ができる確率は、1/694(約0.144%)である。
コインの表・裏の出る確率は50:50。

はい、では、質問です。
3つのサイコロを振った場合、目の合計が9になる確率と10になる確率はどちらが高いでしょうか?お分かりになりますか?
答えは10。出目全体は216通り。そのうち、10が27通り。9は25通り。
ズバッと解答してくれたのは、昨日に引き続きガリレオ・ガリレイ先生。
というか、先生は無性のギャンブル好きo(^▽^)o

ガリレオに遅れること数年、フランスのパスカルとフェルマーも確率論に熱を上げていた。
彼らは掛け金をどう分配するかでモメたのでした。
とまあ、確率はギャンブラー兼天才数学者のものではありません。

お恥ずかしい話、かくいうわたしも競馬に凝った月日がありまして(^^ゞ
義理の弟の結婚式の最中に、浅草まで馬券を買いに行ったことも。
当時流行っていた桐というカード型簡易データベースに馬と騎手、それから、過去レース実績を入れた。もうそうなると、馬が走るというもんじゃなく、数字が走るワケですな。はっはっはっ。

このあたり、人間の性分なんでしょうね。。。
(んな訳ないだろ)

最後に、ギャンブル必勝法でもないが、運良く勝ったなら、すぐ、勝ち逃げすることである。

逃げるが勝ちだ。by 孫子

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インド化計画

ああなんか、インドの神様って話。ネットで調べてたら、だーきにさんという方が管理人の「天竺奇譚」というのを発見。そもそも「だーきに」ってのはインドの魔女の名前だそうで、たまに墓場で死体喰ったりしているという方。(これだけでもすごい)

シヴァの妻パールヴァティが風呂場で垢を集めてガネーシャを作った。シヴァが家に帰えると見知らぬ若者が門前に立っていたので、じゃまだから首をはねて殺してしまう。泣き悲しむ妻に、じゃあわかった、次に門前を通った奴の首を付けてやろうと約束。
それでガネーシャの頭は象の形になった。

これを神話とするか、遠い過去の真実とするかで事情は変わってくる。

叙事詩『マハーバーラタ』には核戦争とおぼしき著述もある。

人間は革のパンツだけで10万年間生きていた訳ではないとする、古代文明変転説である。

ガネーシャの話をバイオテクノロジー、クローン人間の話だと読むと、あそこまで科学的発展を遂げた過去があった、ということになる。

インドの神さま達に未来の人類を見ることもできるのである。

だーきにさんが夜な夜な?墓場をうろつくのには、遠大な人類インド化計画があるのだ。
(きっとそうだ!)

48

ローゼン閣下

おっ、ひょっとして今日は、オタクの話?と気づいた方は流石。
ローゼン閣下とは、第92代総理大臣、麻生太郎氏のこと。そういう名のマンガを麻生氏が読んでいたそうです。
オタク語はそれ自体が文化。

「あぼーん」削除するの意。a bone骨になるが語源。
「荒らし」掲示板などの雰囲気を乱すこと。
「炎上」ブログのコメント欄に意見が殺到すること。

「オサレ」おしゃれの蔑称。
「gkbr」ガクブル。恐ろしさのあまり震えが止まらないこと。

個人的に好きなのは、「○○の俺が来ましたよ」とか、ほぼ同義語の「○○が通りますよ」。

あと、「←なぜか変換できない」。
たとえば、「雰囲気」を「ふいんき」と入力したり、「体育館」を「たいくかん」と入力したり、「全員」を「ぜいいん」とか入力してしまう病の症状。ちょい自虐気味。

それから、「ぬこ」。猫。

では以下は、わたしでも知っているアニメ名セリフですが、出所は分かりますか?

「逃げちゃダメだ」
「オラに力を分けてくれ!」
「親父にもぶたれたことないのに」

これは簡単。
上から、新世紀エヴァンゲリオンの主人公・碇シンジ君のセリフで、困難な敵に直面した時に自分を奮い立たすアファーメーション。
次は、ドラゴンボールから孫悟空が必殺・元気玉をつくる時の掛け声。気恥ずかしさ満点だが、見ているオヤジも力が入るぞ。
最後は、ガンダムのアムロ・レイが上官に殴られた時の厨房セリフ。自分もそんな厨でした。

ちなみにネットオタク語で「倉庫」とは、過去ログが入っているデータ領域のこと。2ちゃんねるでは「壷」とも。

顔文字や絵文字よりも、ネット世界に精通している感じがするし、仲間意識も芽生えるし。
いわは符牒。

この解釈に「全米が泣いた」。(かな?)

49

オヤジ頑張る

俵藤太こと藤原秀郷は、藤原北家の傍流、関東の豪族の家に生まれた。
大志を抱いて京に登る途中、滋賀三上山の大ムカデを退治、大いに武名を上げる。
ところが、宮仕えをした彼は自慢の武芸を披露することなく、満たされぬ思いを抱いて帰郷する。
郷里でも隣り合う土豪とのつまらない土地争いを繰り返し、暴れ者となり伊豆に流される。

数年後父親の死を知り、伊豆を勝手に脱出。
実家に戻り、穀潰しと言われながらも地道にお家再興につとめ、なんとか下野押領使に収まる。
彼はすでに50歳になっていた。

ふつうそこで、やれやれとなるものだが、運命の女神は藤太を放っては置かなかった。

そのころ彼の地元では、彼よりひと回り若いニューヒーローが誕生していた。

赤竜の子、平将門である。

桓武天皇5代目の子孫であり、百済系帰化人の血も入っていた。
何しろ格好良かった。
大胆な集団戦をけしかけて、あっという間に敵を蹂躙。
939年(天慶2年)11月21日常陸国府、同年12月11日下野国府、同年同月15日上野国府と次々に侵攻し、「新皇」を名乗り中央を震え上がらせた。

翌1月19日朝廷は将門を討つために、参議の藤原忠文を征東大将軍に任命、征東軍は2月8日京都を進発した。
しかし、事態は征東軍の到着前にけりがついてしまう。

まず藤太が2月14日、将門の本拠地である石井営所(現在の茨城県坂東市岩井)一帯を焼いた。
一方の将門は風上に陣取り追い風を利用して先頭に立って突撃を敢行。敵歩兵を蹴散らして潰走させた。
藤太の命運もはやこれまでかと思われたその時、突如風向きが変わり、1本の矢が将門の眉間を貫いた。
こうして、平将門の乱はあっけなく鎮圧された。

藤太は自分が押領使(現在でいう県警本部長)だったので、職務を全うしただけだと考えていた。

運命の女神はそういう男が大好きなのだ。

50

夫婦善哉

織田作之助の小説「夫婦善哉」の主人公・蝶子と柳吉のふたりは、何度も夫婦の危機を迎える。とはいえ実はふたりは内縁関係。
はじめは柳吉が妻子が居ながら、11歳下の芸者・蝶子を「何ぞうまいもんを食べに行こう」と連れ出したのがきっかけ。
いつしかふたりは不倫同棲カップルとして生活し始める。
ええとこのボンボンの代表選手のような柳吉は定職に就かず、剃刀屋とか関東煮屋とかカフェとか思いつきで始めては、失敗する。その都度実家に舞い戻り、何とか元のサヤに収まりたいと老父にすがる。金を無心する。
一方、それを追いかけて行って、「あてが一人前の男にして見せます」と啖呵を切って連れ戻す蝶子。

彼女は出張芸者として生活費を稼ぐが、少し貯まってくると、柳吉の方は一晩で遊興で使ってしまう。彼の本音はこのくされ縁に一刻も早く終止符を打ちたいのだ。
それでも、「何ぞかうまいもんを食べに行こ」で関係が修復する。
大阪はうまいもんがぎょうさんあり、しかも安いでという、隠れミシュラン的要素満載だ。

ふつうこうしたカップルはちょっとした行き違いで別れるもの。
ところがこのふたり、性格の不一致どころか、全てにおいてちぐはぐだ。
蝶子は実家の両親に認めて貰いたい一心だ。
ゆえに身を粉にしてはたらく。男に尽くす。
ところが柳吉は食うや食わずの生活など真っ平。なんとしてでも、実家に帰り商家の旦那に戻りたいと考えている。金に不自由しない生き方を望んでいる。

ある日、柳吉は残してきたひとり娘から老父が危篤と知らされる。
蝶子は慌てて出掛ける柳吉に、晴れて夫婦になれるよう頼んでほしいと言付ける。
ところが、葬式にも出させるなと追い返えされる始末。
蝶子は絶望からガス自殺を図る。

が、未遂に終わり、これほどの出来事があったにも関わらず、ふたりはいつもの日常を再開する。

それから、柳吉が蝶子を連れ出して行くのが、法善寺そばの「夫婦善哉」だ。
蝶子はぜんざいをすすりながら、もう何も望まないで行こう。ただ私が彼を愛すればそれでいいと自分に言い聞かせる。

蝶子と柳吉は、自分と仕事の関係によく似ている。と最近よく考える。

51

アンビバレンツ

正直、今年の阪神には期待していない。
というか毎年、期待した事はない。
それでも、大阪に出張するときは、かならず甲子園 に見に行く。
神宮にも行くし、後楽園でも試合中は黙って見ている。
実は今のところ、観戦負け知らずだ。フフフッ。

シーズン中はテレビ観戦するため、早目に帰宅する。
チャンスで凡退?いいじゃないか。
終盤に逆転の一発をあびる?それもまた、よろし。

心が鍛えられる。
執着が無くなる。
隠れM男だ。
他人に寛大になれる。

だからわたしは自分を、阪神ファンだとは、認めたくない!

52

P波・S波覚えてますか

昨日午後、宮城県で過去最大級の地震があり、大きな被害を出した。
犠牲になった方のご冥福と、行方不明の方々の一刻もはやい救出を願うばかりである。

余震も続いているばかりでなく、茨城県沖とか長野県北部とかに連鎖しているようだ。

そういえば中学校の理科で、地震のP波・S波を教わったように覚えている。
確か、P波は速度が速く最初に地上に到達。初期微動を起こす。
このP波は地殻の中では秒速6.5km。地盤を縦に揺らす。

昨日の揺れは確かにそんな感じで始まった。
わたしは東京湾々岸に面した大きな倉庫の中に居たが、はじめ、閉じられていた防火シャッターが音をたてて鳴っていた。
P波がシャッターをぴょんぴょん跳ねさせていたのだ。
わたしは誰かシャッターを叩いているのかと思ったくらいだった。

ところが、続いて横揺れが来た。物品を格納したネステナーが縦の連結ごと、右に行ったり左に行ったりした。
あっ、地震だとやっとそのとき感じたのである。

これがS波で、2番目の波(Secondary wave)を意味している。
S波の速度は秒速3.5km。
横波であり、地上を大きく横に揺らし、広範囲に被害をおこす。
冷静に観察していれば、P波・S波の到達時間の差で、震源地がだいぶ遠いことを悟ったはずだ。
それにしても、ずいぶん長い時間揺れが収まらなかった様に感じた。

おそらくそれは、もう一つ「表面波」という地震波によるものであろう。
これは、地中を伝わってきた地震波が地上に到達したあと、地表に沿って進む波のことだ。
数秒から数十秒の長い周波の揺れを生み出すため、S波より大きな揺れになる。
高層ビルをグラグラ揺らせたり、東京のように堆積層が厚いと表面波が増幅される。
P波・S波よりも減衰しにくく、長く揺れがつづく。

つまりあの長い揺れは、震源地での衝撃の激烈さに由来するものだったのだ。

また、今回被害をひどくした津波も、表面波と同じメカニズムである。
強烈な地震の衝撃で波長が長くなればなるほど、エネルギーが減退しないのである。

53

第2の矢

第2の矢とは、お釈迦さまの例え話。
ある人が矢を身に受けて、誰が放った矢なのか(後で必ず報復してやる)とか、どうしてそうなったのか(原因を究明し対策を打とう)とか、矢に毒が塗ってあるかどうか(将来の悲劇を過度に恐れる)とか、いろいろ考えて、まず矢を抜くことを忘れてしまったことを指す。
つまり、みずからの心が放ち更にわが身を傷つける矢のことである。

想像を絶する大地震が起きた被災地では2次災害のことだが、無事だったそれ以外の地域で身の安全が確保できているわれわれ一般国民たちにも第2の矢がある。

おそらくこれから起きるのは、食料供給とか電力不足とか交通渋滞とかからくるイライラと、それに伴う異常行動であろう。

物流から見れば、SCMによって極端な在庫削減を行った。そうして、消費者から遠いところに、商品在庫があり、トラックと通過型センターがあり、さらにトラックがある。
わたしはこうした複数のリンク&ノード理論で、複雑なロジスティクス構築のお先棒を担いで来た。

戦争ではないが、まさに奪い合いが起きつつある。
自家用車を所有していれば、どうしてもそれに乗りたくなるし、そのために燃料を満タンにしておきたくなる。
食べ物の供給不足という不安感から、われ先にとスーパーやコンビニの店頭に殺到し、余分なモノの購入をするだろう。
そのあたりの不安を取り除くべく、正確な情報を得れないことに端を発したイライラは、ますます高まるだろう。
モノの奪い合いばかりではない。
他の人の考え方や時間をも拘束しなければ気が済まなくなるだろう。

と、ここまで書いてきたのを読み直すと、どうも、異常思考はもうはじまっている。
わたしはわたし自身、それを抑え切れないかも知れない。
何が起きても平常心でいられるとは思えない。現に大地震発生日にJRが止まっているからと、浜松町駅の付近から事務所のある末広町まで歩いているのだ。

第2の矢を身に受けないためには、よっぽど心の鍛錬を要する。

54

代替エネルギー

もう、お分かりだと思う。
やっぱり現行の、火力発電や原子力発電、ましてや水力発電は、その見返りとして犠牲となるものが多すぎる。

わたしはこういったことの知識は皆無だ。
それでも現在、もっと安全にエネルギーが取り出せて、効率が良く、しかも低コストという技術を開発してはいないのか、と思う。
(ごめん、今日はどうかしている。)

そうしたことを真剣に考えている方もいらっしゃるだろう。
それでも、わたしはトーシローだから、余計にそう思うのだ。
大学とかで、研究していないのか、と素朴に思う。
就職活動で忙しいのは分からんでもないが。。

テレビとかでやっている、何ケタもの暗算が瞬く間にできたり、コンピュータの天才とか言われていたり、国家機密をハッキングできたり。
ああした才能の持ち主は、ふだん何をしているのだ?

この度の震災の教訓は多いが、ひとつには、早く安全で安心な代替エネルギーを開発するということではないか。
この哀しみに報いるためにも、日本人は強い意志を持って取り組まねばならぬということではないか。

ブログとかFacebookとか、何のためにあるのか。
もっと、未来創造の建設的な意見を戦わせる場として、使う人は現れないものか。

そして日本政府は国家予算の何割かを割いて、代替エネルギーの研究とその実用化をするべきだ。

急ぐべきだ。

55

天の意志

石原都知事の「天罰」発言がニュースになっていた。
都庁に多くの苦情が寄せられたのを受けて、都知事は撤回と謝罪を告げていた。

都知事はいつもそう考えているのだろう。
ただし、それを公言してはいけない立場の人もいるということだ。

私は、天罰ではないが天意はあると思う。
これはある種の信仰であるから、容易に棄てることはない。

自分は物流が生業だからか、この期に及んで物流のことばかりが気にかかる。

救援物質の調達。
避難場所への輸送。
避難者の受け入れ。
援助作業者の配置。
こんなところは物流だよなあ。
それからこれらも。
電気。
電車。
正確な情報の伝達。
コンビニやスーパーの店頭。
ガソリン。
緊急を要するところでは、海水注入。
そして、安否不明者など、数の把握。

臨時電話と通信手段の設置。
落ち着いたところで、膨大な津波残滓撤去。

新しい町の建設。
これを何とかしてみよと言われている。
・・・だよね。物流だよな、やっぱり。
世界中からの祈りも届いてる。

56

神の光

高村薫の小説「神の光」。
原子力発電所へのテロを描いた長編で、ラストで主人公はついに原子炉の禁断の蓋を開け、核燃料が妖しく放つ「神の光」を見る。
原子核は陽子と中性子で構成されているが、陽子と陽子は電気的に反発し合う。
中性子は、論理的に陽子と陽子の間に緩衝材的な存在・中性子があるだろうとの予測から発見された。
この陽子と中性子を結びつけている力を核力といい、陽子どうしが反発しあう電気的な力のおよそ100倍もの力で引き付け合っている。

核分裂とは、大きい質量の原子核を2つに割ることだが、割った2つを足し算しても元の質量とイコールにはならない。目減りしている。割れた際に減ってしまう。
減った質量はエネルギーに変換されていたのだ。(特殊相対性理論)

エネルギーの正体は無理矢理引き離された核力だ。
この失った質量1グラムのエネルギーは実に、石油2150トンに相当する。

そうなると先日、代替エネルギーについて述べたが、これはやはり原子力を正しく利用することではないかと思われる。
問題はそれを取り扱う技術なのだ。

原発は核分裂エネルギーを利用するための施設である。
ウラン235の原子核に中性子1個を入れて二つに分裂させて得られるエネルギーを使って、水を沸騰させて蒸気としタービンを回す。
あの強烈なエネルギーは、お湯を沸かすのに使われているのだ。

どう見てもロスが多そうだ。
しかも、ガンマ線と中性子線という放射線と分裂してできた新たな原子核が、勢いよく飛び出している。

そう、忘れてはならない。
核燃料は小さい太陽なのだ。

「・・・プロメテウスの憐れみにより、人間は「火」を手に入れた。
それは実は、神々の知恵を盗み取る行為であった。
ゼウスは怒り、プロメテウスに永劫の苦難を与え、人間には多くの災厄を与えた・・・」

核力を盗み取ることは神の領域を侵しているのだ。
私たちはもっと謙虚に、もっと敬虔であるべきではなかったのか。

57

経産大臣の発表を評す

17(木)に海江田経済産業大臣の臨時会見があり、「ガソリン・軽油等の緊急の供給確保と輸送力強化の抜本対策」が発表された。
ひとつはタンクローリーの大量確保。
もうひとつは西日本の製油所の稼働率を上げて供給量を増やすということだ。
このふたつの対策で、日次2万リットルを東北地方に転送供給できるとしている。

そう聞くともう解決したも同然、と思えるが、疑問は枯渇している所にきちんと行き着くのだろうかという一点だ。
意地悪っぽく聞こえたら申し訳ないが、被災地の困窮はそこにあるからだ。

政策立案者は供給サイドではなく、需要サイドの状況を見ているのか。
問題はサプライにあるようでデマンドにある。

その視点がロジスティクスの視点。

資料によると、宮城県一県で1日あたり1万リットルの販売量があったという。
その数字から算出した計画のようだから、なおさら納得できない。
立案者は各地の実需にどう肉薄したのだろう。

そもそも、海江田大臣の会見で実を結んだのは、大規模停電発言で、すわ大変ということで、帰宅時間を早めたぐらいか。

まあ、わたしがとやかく言わなくても、この対策は話題になっていない。
新聞にも載っていない。テレビでもそれ以降は報道されない。

物流はお叱りを受けはするが、褒められたためしはない。
物流に善し悪しなどない。結果を出さなくてはならない。

58

補給戦

被災地の避難所に、なかなか救援物資が届かないと聞く。
なぜこうした事態が解決しないのかというと、それは、人間のやることって、だいたいいつもそうだからだ。
つまり人間の知恵の至らない所を巧妙に突かれるから、いかんともしがたいのだ。

したがってすぐさまロジスティクス線が築けないのは、人間の未熟さ所以だ。

そう考えると、あの膨大な津波残滓を乗り越えて三陸海岸の津々浦々に物資を届けるには、最後は人の背を以って行うしかあるまい。
これはゲリラ戦だ。
ゲリラ戦を戦うには、各個撃破しかない。
避難所ごとに補給作戦を揃えることだ。

それから、これら小さな物流を統帥する者が必要だ。
現行政府が原発事故の事態収拾に苦慮しているなら、別人を立てよ。

中心となるのは、自衛隊でも良いし、警察でも良い。
彼らは優れた物流業者でもあるからだ。

もう一度言うが今、物資が思うように避難所に届かないのは、要するに将軍の不在による。
したがって、これは統帥の問題である。

だから、いったん任せたならば、とやかく言わないことだ。
とくにマスコミとか、有識者とか、政治家とかガタガタ言ってはならない。

それからこれも繰り返すが基本線は、小さなPDCAのサイクルをいくつも廻す。日替わりで廻し、そこに民間企業とかボランティアの皆さんを巻き込むことだ。

そして将は夢を掲げよ。
いついつまでに何がどうなる、と全軍の到達目標を示すことだ。
by 孫子

59

青き衣の者(1)

青き衣の者とは、風の谷の族長の娘、ナウシカのことである。

28世紀、地上は「火の7日間」を経て不毛の地と化した。
私は福島第一原発事故が、ナウシカの時代を作ると言っているのではない。

もうすでに、私たちはナウシカの時代に生きている。

中性子線などにより放射能汚染が拡散しつつあるエリア。
瘴気に満ちた腐海。

利権を奪いあう王国の主。内紛。陰謀。
大国トルメキアと諸侯国土鬼ドルク、それに巻き込まれる辺境諸国。
巨大電力企業と経済産業省管轄の保安院、それに国内最高学府の学者らが真実をうやむやにする。

見よ、王蟲の群れが迫りくる。

かつて世界中を焦土とした後、化石となって朽ちたはずの巨神兵を復元せんと執心する神聖皇帝。
原子力の世界と隠されたテクノロジー。

今わたしははっきりと分かった。
ナウシカとは、あなた方の事だ。

放射能汚染で早々に隣国が見限った土地に平然と暮らし、多少汚染されていても全く動じず水道水を飲み、地元農家に心を痛める。
多少放射線が増加しても、停電しても、ガソリンスタンドに並ばされても、黙々と生きる。
生きている。
青き衣を着て金色の草原を行くが如し。

「・・・神様!風の神様。どうかみんなを守って!!・・・」
nausicca_bot

青き衣の者たちよ、お願いだ。わたしも連れて行ってほしい。そしてわたしに、大海嘯と青き衣の者たちの伝説を語ることを許しておくれ。

60

青き衣の者(2)

ナウシカの物語は、災厄をもたらす者を愛し、許す物語である。
危機の時代、「許し」は最強の力を持つ。

ナウシカは虐げられた人々はもちろん、世に疎まれた人殺したちや、世界征服をたくらむ権力者、瘴気を撒き散らす醜い巨大昆虫・巨大植物を愛する。
とくに彼女を騙し、彼女を傷つけ、彼女を疎ましく思う者に対し、なんで?というほど優しい。
巨神兵にたいしては、わが子と呼び、名前を与えている。

ある人の説ではナウシカの胸は、彼らを抱きしめるために大きい、とある。

考えてみると、イングリッドバーグマンが演じたジャンヌダルクも、そういうところがあった。
本やその他で紹介されるジャンヌは成人男子を凌ぐくらいの、愛国心と信仰心と、何としてもやり遂げるという強い意志の持ち主であるように描かれる。
おそらくはそうなのだろう。

が、それだけではない。
とくにイングリッドバーグマンのジャンヌダルクは、誰にでも優しい。
彼女を狂人扱いした町の権力者や、歳若い娘と軽んじた皇太子や、経験不足を侮辱した軍曹にも。
オルレアンで対陣した敵国の将にも。
彼女を貶めた聖職者たちにも。
魔女と蔑んだ民衆らにも。
自らを火あぶりの刑にした運命の神にさえも、彼女は苦悶の中で理解しようとする。

本日テレビで東電の会長が謝罪していた。
あんなふうに白髪頭を下げないでくれという気持ちになる。

米軍人に空襲で何万人、原爆投下で何万人殺されても、今は高校生と一緒に体育館の床掃除をしている様子を見せられると、感謝の気持ちで満たされる。

私たちの歴史は何度挫折しても、何度辛酸を舐めても、その境遇を受け入れ立ち上がってきた歴史である。
私たちは、この災難を通じて、「許し」の容量を増やしているのかも知れない。

61

聖武天皇の祈り

歴史を見れば、国に大災害が発生し犠牲が多くの人々に及んだ折りに、為政者は鎮魂のために寺院を建立している。

聖武天皇が生きた奈良天平時代も、凶作、飢饉、地震、疫病とあらゆる災害が頻発した大変な時代だった。
天平13年(741年)天皇は中央に東大寺大仏を造立し、諸国に国分寺を建立することを決意した。

本日はまことに勝手ながら、武蔵国分寺跡資料館解説シート2011年3月号より一部抜粋させていただこう。

『国分寺建立の詔』
「私は徳の薄い身であるのに、おそれ多くも天皇という重い任務を受けている。

しかし、民を導く良い政治を広めることができず、寝ている時も目覚めている時も恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。

昔の賢い君主は、みな祖先の仕事をよく受け継ぎ、国家はおだやかで無事であり、人々は楽しみ、災害はなく幸福に満ちていた。
どうすれば、そのような仕事ができるのであろうか。

この数年は凶作が続き、伝染病が蔓延している。
私は恥ずかしさとおそろしさで自分を責めている。
(中略)
そこで、諸国はそれぞれ七重塔一基を敬って造り、あわせて金光明最勝王経と妙法蓮華経各十部を写経させることとする。
私もまた、金文字で金光明最勝王経を写し、塔ごとに一部ずつ納めたいと思う。

これにより、仏教の教えが大空・大地とともにいつも盛んとなり、仏のご加護が常に満ちることを願う」
・・・・・・・・・・
こうした仏教による鎮護を願うなんてアナクロ過ぎて、、、という御仁もありましょうから、これ以上はあまり述べないでおきましょう。

それでも、聖武天皇の祈りはそうとう本気だったらしく、その後、日本人は何かということを明らかにしたし、世界に誇れる日本文化を形づくることに貢献した。

今の為政者にも何か心に期するものがあって欲しいと希うばかりである。

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